政府は、「スタートアップ育成5か年計画」を2022年に策定しました。
本計画では、スタートアップが多く誕生するための施策を掲げ、各施策の内容を掲げています。
Reサラが、起業にまつわる「再チャレンジ・セーフティネット」に関心を持つスタンスであることを踏まえ、本計画の中で「再チャレンジ・セーフティネット」に関した施策がないか、あるのであれば具体的にどのようなものなのかを読み解きます。
「スタートアップ育成5か年計画」とは何か?
「スタートアップ育成5か年計画」は、日本国内のスタートアップ企業の育成およびそのエコシステムの強化を目的としています。
個別の取り組みについては、「そもそも「スタートアップ育成5か年計画」とは何なのか?」から確認してください。
「スタートアップ育成5か年計画」の中での「再チャレンジ・セーフティネット」
「スタートアップ育成5か年計画」では、次の取組を中心に推進しています。
① スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築
② スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化
③ オープンイノベーションの推進
上記3つの取組みがそれぞれ施策が細分化されています。
細分化された施策の中で、「現役スタートアップ経営者が考える『起業家を増やす』ためのアイデアとは?」で現役スタートアップ経営者が最も多く挙げた「再チャレンジ・セーフティネット」に該当するものは含まれているでしょうか?
起業に挑戦したものの失敗に終わってしまった人材サポートを中心とするReサラの観点から、「① スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築」について、「起業準備段階」「スタートアップ経営中」「事業撤退後」の3つのフェーズに分けてみたのが下の表です。
表の中のアルファベットは、各施策の番号を指しています。
表を見ると、残念ながら「再チャレンジ・セーフティネット」に該当するものは、「11. 再チャレンジを支援する環境の整備」1つしかないのが現状です。
- メンターによる支援事業の拡大・横展開
- 海外における起業家育成の拠点の創設(「出島」事業)
- 米国大学の日本向け起業家育成プログラムの創設などを含む、アントレプレナー教育の強化
- 1大学1エグジット運動
- 大学・小中高生でのスタートアップ創出に向けた支援
- 高等専門学校における起業家教育の強化
- グローバルスタートアップキャンパス構想
- スタートアップ・大学における知的財産戦略
- 研究分野の担い手の拡大
- 海外起業家・投資家の誘致拡大
- 再チャレンジを支援する環境の整備
- 国内の起業家コミュニティの形成促進
現在の計画では、少々偏った見方ではありますが、スタートアップの多産に重点を置いている印象です。
起業準備段階 | スタートアップ経営中 | 事業撤退後 | ||
①スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築 | 再チャレンジ・セーフティネット | ー | ー | 11 |
その他 | 3, 5, 6,7, 9 | ー | ー | |
1, 2, 4, 8,10,12 |
「11. 再チャレンジを支援する環境の整備」とは
「再チャレンジを支援する環境の整備」が具体的にどのようなものなのでしょうか。
以下、「スタートアップ育成5か年計画」に記載されている内容を引用したものです。
2022 年に雇用保険法を改正し、失業給付について、本来なら原則離職後1年が経過すると受給資格を失うこととしたところ、起業して事業を行っている間は、最長3年までは、受給期間に算入しないという制度を創設した。
本制度についての十分な周知を行うなど、起業家による再チャレンジを後押しする環境の整備を図る。
2022年7月に新設された特例「離職後に事業を開始等した場合の雇用保険受給期間の特例について」を指した内容です。
詳しい解説は割愛しますが、既に施工されている施策であることから、「スタートアップ育成5か年計画」の中では、今後新しい取り組みはなされないということがわかりました。
まとめ
今の政府は、スタートアップに対して、まずはスタートアップの「魅力」を全面に訴求することで、多くの人が関心を持ち挑戦することを後押しするスタンスを採っていることが、上記の通り理解できました。
日本人のリスク回避的な性格を踏まえた、そして現役スタートアップ経営者が「『起業家を増やす』ためのアイデア」として挙げている「再チャレンジ・セーフティネット」へのフォローはまだ薄いのが実情です。
政府が攻めのスタートアップ政策を採るのであれば、Reサラは守り(セーフティネット)と攻め(再チャレンジ)のスタートアップ支援を行うと棲み分けをするという前提に立つとします。
であれば、両者でスタートアップ環境の好循環を生み出せるなら、より日本のスタートアップ環境は活発化・成熟化すると願わずにいられません。
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